独学で1級小型船舶免許取得~その1(準備)

【1級小型船舶免許の取得】

1級小型船舶免許の取得にあたって

特殊に続いて、独学で1級小型船舶操縦士免許の取得に挑戦。
1級とは、操船できる船の大きさは2級と同じ(総トン数20t未満)であるが、全ての海域が航行できる免許。1級と2級は「沿岸から5海里(約9km)」という航行区域で区切られていて、5海里に制限されている2級は”沿岸免許”、5海里を超えて航行できる1級は”外洋免許”という位置づけ。5海里というのは、だいたい海上から目視で陸地が見える距離。5海里を超えるということは、目視に頼らず目的地(陸地)に辿り着けなければならないわけで、その技量を持っているかどうかが試験のポイント。1級を持っていると、その気になればヨットなどで海を渡ることも可能(実際には、船の航続距離や、100海里を超えての航行には海技士や機関士の同乗が必要とかあるが)であり、もちろん沿岸部や河川の運行も可能。ただし、1級や2級免許では水上バイクに乗ることはできない(特殊が必要)。
ボクは2級を持っているので、1級小型船舶免許(以下1級)を取得するには2級からのステップアップという形になる。新規で1級や2級免許を取得する場合と比べると、ステップアップの場合は学科の問題は少なく実技試験も免除となる。前述のように、目視に頼らない航行や航海ができるかどうかが試験のポイントであり、操船自体は外洋も沿岸も同じということだ。

このステップアップによる1級小型船舶の取得方法は3パターンあるので、以下にまとめてみた(特殊とは費用が違うだけだが)。
※以下の費用はステップアップ前提の場合。免許の無いゼロからの受験のケースはおよそ倍額程度と思われる。

・ボートスクール
費用:25,000~35,000円程(機材別)
期間:講習1日+国家試験1日
特徴:一般的にはこの方法と思う。「ベルソン」や「MGマリーン」など多くのスクールで開講。受験申請から免許発行までの面倒な手続きは全てスクールにお任せ。スクールに言われた通りにしていればまず取得できるだろう。

・登録教習所
費用:35,000~40,000円程(機材別)
期間:講習2日(国家試験免除)
特徴:「日本船舶職員養成協会」などで開講。水産高校や海洋大での単位カリキュラムに含まれているのもこのタイプのようだ。教習スケジュールが決まっている。受験申請から免許発行などの面倒な手続きは全て教習機関にお任せ。国家試験が免除となる(但し修了試験あり)。

・独学受験(個人受験)
費用 5,900円(機材別)
期間:独自学習(1週間程度)+試験1日
特徴:取得計画は全て自分都合で可。費用としては最小限の費用で済む。教材および三角定規やディバイダなどの機材は全て自分で調達し、受験申請や免許発行の手続きまで全て自分で行う。試験機関の窓口は平日のみなので、仕事を休まなければならないことも?

特殊船舶免許の合格でなんだか自信がついたせいか、1ミリも迷わず個人受験することに決めた。

1級の特徴は、学科(上級運航)に海図問題があるので、試験の際には三角定規とディバイダやコンパスといった機材が必須であること。理系大学や工業高校卒の人など、製図の経験がある人なら持っている人も多いだろう。製図用の高価なものじゃなくても構わないが、三角定規は長辺が30cm程度、コンパスやディバイダは15cm程度のものが使いやすい。いずれも100均で売っている程度のもので十分であるが、三角定規は学童用の15cmほどのものでは長さが不足して誤差を生じやすいので、これだけは大きいものがお勧め。また、ディバイダは使わず、コンパスだけで二役こなすことも可能であるが、作業効率を考えるとディバイダがあるに越したことはない。
ちなみに、コンパスとディバイダとは、似て非なるもの。丸を描くのがコンパスで、ある点からある点までの間隔を写し取って、それを定規上に持っていって寸法を確認したりするのがディバイダ。精度という点では絶対にディバイダが正確。というのは、コンパスではどうしても芯の先が針のさきよりも太くなるので、この差が誤差になるのだ。

1級小型船舶試験について

受験の申し込み手続きなどについては、試験機関「日本海洋レジャー安全・振興協会(JMRA)」のサイトに掲載されている。

「財団法人 日本海洋レジャー安全・振興協会」

小型船舶免許の取得、更新 – 小型船舶操縦士試験機関・講習機関
ボート免許、水上オートバイ(水上バイク)免許の取得方法や免許証の更新方法についてご案内いたします。

試験機関で配布されている「1級小型船舶操縦士試験についての説明書」は必ず読んでおくことをお勧めする。これは、受験申請の際に試験機関でもらえるものなのだが、HPからもダウンロード出来る。ときどき更新されているようなので最新のものを確認すること。
最新版(2010/12月現在) https://www.jmra.or.jp/faqs_cat/subjects?id=faq1694

受験の準備

◇試験申請費用(現有2級からの1級小型船舶受験)

  • 身体検査: 免除(2級受験での合格から1年未満のため)
  • 学科試験: 5,900円
  • 実技試験: 免除(2級所有のため)
  • 写真(1枚): 0円(なんかの時の余り)
  • 住民票: 0円(2級免許のコピーを添付することで不要)

小計:5,900円

ここまでが受験申請時に必要な諸費用。
加えて、合格後の免許証発行申請の際には

  • 登録免許税: 2,000円
  • 写真(1枚): 0円

が必要。

合計:7,900円

◇その他、教材や機材など

といったところ。
三角定規は、30cm前後の大きめのものが使いやすい。学童向けの小型のものでもできないことはないけどオススメしません。三角定規を2つ組み合わせて線を移したりもするので1組(2つ)必要。ディバイダはガタついたりグラグラしないものを選ぶ。コンパスの芯を針に替えてもいいけど、コンマ数ミリの精度が必要なのだ。
いずれも、精度が悪いと誤差で解答が変わってしまうので気をつけましょう。
学生の時の製図用具一式が実家にあるはずなのだが、探してもらうのも面倒だし送料もかかるので、この際購入してしまった。
そういうわけで、受験費用およびテキスト&機材含めて、しめて10,000円程度。

独学で1級小型船舶免許取得
▲身体検査と実技が免除となっている。

学科試験の対策と学習

試験の内容、配点、合格基準等などは、試験機関JMRAのHPに書いてあるとおり。

小型船舶免許の取得、更新 – 小型船舶操縦士試験機関・講習機関 | 免許の取得 – 試験について
ボート免許、水上オートバイ(水上バイク)免許の取得方法や免許証の更新方法についてご案内いたします。

ボクは2級からのステップアップなので、出題範囲は上級運航Ⅰ(8問)と上級運航Ⅱ(6問)の計14問。合格ラインは、それぞれの科目で50%、かつ全体配点で65%の正解率をクリアしなければならない。回答は全問4択となっていて、上級運航Ⅰの半分(3問)が海図問題。海図を使って解答を導き出し、4つの選択肢から回答するといったもの。
海図以外の11問は、予備知識がなくても1/3は解けると思える常識問題だ。加えて、車のメカに詳しかったり、気象の知識がある人なら、おそらく1/2には届くだろう。調べれば調べるほど、”上級”という言葉からイメージされるほど高いハードルではないことがわかった。ただ、受かるためだけなら過去問丸暗記でもいい けど、活用するつもりなら内容はちゃんと理解しておいた方が良いと思う。なにせ自分の命に関わることなので・・・
2級の学科とちょっと違うのは、問題で与えられた情報から解答を得るのに多少の計算を伴う出題があることだろうか。暗算でできる程度の簡単な計算なので、慌てて計算間違いしないようにしたい。

ボクが行った学習方法は、次の通り。

  1. 前述の問題集「「1級小型船舶操縦士(上級科目)学科試験問題集」」(以下、問題集)の海図問題の解き方(P.7〜P.16)は、一通りやった。本試験と同じ練習用海図が添付されているので、それを使用しての学習。付属海図を使い、解説を読みながら解くのを1回、自力で解くことを1回づつ練習。海図は、解くために書き込みやコンパスで穴が開いたりするので、コピーしたものを使い捨てにした。
    いそぎ答えを求めることより、解き方、考え方を理解するのを優先した。、基本的なチャートワークに加えて、あとは少しの応用力さえあれば、解くのはさほど難しくはなかった。
  2. 問題集には過去問も載っているが、解き方さえわかってしまえば後はどれも同じ。問題集の海図の解き方(P.7〜P.16)が完璧ならどんな問題にも対応できると思ったので、過去問については出題を読んで解くステップがイメージできればOKと思う。
  3. 海図以外の問題は、予備知識ないまま一度やってみて、間違ったりわからなかったところだけを復習。
  4.  試験機関に受験申請に行った際、過去の問題(試験の余りと思われる)が「ご自由にお持ち帰りください」となっていたのでいただいてきた。試験の問題用紙そ のままなので解答はないが、窓口のおねえさんにお願いして模範解答をみせてもらった。ざっとだけど一度やってみて問題なかったので、ちょっと自信がつい た。

実技が免除というのはかなり気が楽なもので、試験日までは、時間のあるときにテキストを読み返した程度。

さて、1級小型船舶の試験日は、いよいよ1週間後。

関連リンク

2級船舶免許取得記~その1(準備編)
2級船舶免許取得記~その2(実技講習)
2級船舶免許取得記~その3(受験編)
2級船舶免許取得記~その4(完結編)
独学で特殊船舶免許取得に挑む(準備編)
独学で特殊船舶免許取得に挑む(受験編その1)
独学で特殊船舶免許取得に挑む(受験編その2)
独学で特殊船舶免許取得に挑む(完結編)
独学で1級小型船舶免許取得~その1(準備)
独学で1級小型船舶免許取得~その2(受験)
独学で1級小型船舶免許取得~その3(おわりに)

 

コメント

  1. […] 「独学で1級船舶免許を取得〜」だそうです。 […]

  2. 大井健司 より:

    シンノスケさん、記事ありがとうございます。とても参考になりました。

    • シンノスケ より:

      コメントをいただきありがございます。
      少しでもお役にたてたならよかったです。

    • 大井 健司 より:

      シンノスケさんの記事に魅せられて、昨日問題集を購入しました、アマゾンで、2016-2017版になっていました、価格は変わっていませんでした。 私は今4級のままなので、まずは再来週に2級への更新&講習を受ける予定です。 

    • シンノスケ より:

      4級のままということは、失効されているということでしょうか。せっかくの資格ですのでもったいないですよ。1級は決して難しくはありませんが、ただ、ペーパー船長の私は自分の技量に生死をかける気はありません(笑)。陸地が見えない洋上なんて、怖くてとても無理です。

    • 一昨日、失効講習を受けて、昨日、二級の免許もらいました。 JMRA(横浜)で、一級のステップアップ試験の申し込みもしました。 4級失効のままでも受験可能とのことでした。 船持って無いし、乗る予定も無いので二級の免許は記念品に成りそうです、もちろん一級合格すればですけど。 いろいろな情報をありがとうございました。 更新と一級チャレンジの話は自身のFacebook(大井 健司)に乗せたので、よろしければ見てくださいね。 

  3. 大井 健司 より:

    シンノスケさんの記事に魅せられて、昨日、ついに念願の1級ステップアップ試験を江ノ島会場にて受験。 40年ぶりの船舶試験ですごく緊張しました。 結果は5日後ですけど間違ったところは見当たらなかったので大丈夫だと。 船舶免許を取りたいという友人がいたらシンノスケさんの記事を見るように勧めたいです、本当にありがとうございました。     

    • シンノスケ より:

      ステップアップ受験されたんですね。終わってみると、こんなものかという感じでしょうか。自己採点でOKなら大丈夫ですよ。

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