「仙台初売り」・・・伊達の藩政である300年も前から続く、この地域の恒例行事である。
東京などでも最近では"初売りセール"が行われるようになったが、仙台の場合は"セール"というよりも"お祭り"の性格が強く、商習慣の他、文化としても定着している。年末年始に新聞に折り込まれるチラシをみているだけでも楽しめるのだが、そんな様々な企画のなかでも外せないのは「福袋」。仙台の福袋の代名詞となっているのは、江戸の昔から続く、茶箱に詰められた福袋である。この茶箱、もともとお茶屋さんにとっては廃棄物となるもので、今で言うならダンボール箱か。それを福袋の梱包材として利用しているわけだ。
そして、この商習慣には仙台商人のモラルさえも感じられる・・・・・ふと気付けば、そんなことを考えていた。
昔からの商慣習では仙台初売りは1月3日からであった。そして郊外の商圏の初売りが1月2日から。
なぜ1日ずらしているのかを考えてみたことがあるだろうか。
初売りのピークは初日の開店時だ。福袋目当ての客は早朝や前日から並ぶ。
同時に開いたのでは、より規模の大きい市内商店街にほとんど購買客が流れてしまう。1日ずらすことにより、客にとっては両方の初売り初日を楽しめ、郊外のお店にとっては市内のお店に客を奪われることが避けられるわけだ。共存するための仙台商人のモラルであったのだと思いたいが、実のところは不明だ。
それが昨今、首都圏をはじめとする他地域からの大型店舗やチェーン店の進出が相次ぎ、慣習に沿わず1月2日や元旦の初売りをはじめた。当然のようにそちらに客層が流れ、市内の老舗店も追従しないわけにないかなくなった。そして郊外のお店にとっては、市内が元旦スタートだともう初売りは成り立たない。買い物帰りや2日目以降の、すでに財布が軽くなった客をターゲットにするしかないわけだ。
消費者側にとっては欲しいものが安く買えることに越したことはないのだけど、郷土文化としての仙台初売りは残していって欲しいものだ。