【受験編その2】
■操船の実技試験
陸上の試験が済み、そしていよいよ操船の実技試験。
船艇点検の試験後からボクの操縦試験の予定時刻までは1時間半ほどあったので、その間に昼食をとることもできたのだけど、昼食は後回し。コースの復習のあと、着替えを済ませて(といってもカッパを着るだけだが)、他の受験生の試験の様子を見学することにした。
11月という季節柄、風は冷たく、周囲に一般のボートや水上バイクはいない。自分の順番を待ちながら少しでも他の人の操船を観察しようと思ったのだけど、ブイの並ぶ試験会場は桟橋から結構離れていて、なんとなく様子はわかるものの細かいところまではみることができない。試験員のライフジャケットに大きく書かれた「試験中」の文字だけが目立っている。
河川なので波はほとんどないものの、ブイで折り返した後に、自分の引き波でポンポン跳ねている様子がわかる。
「うわっボクにできるだろうか!?」と段々不安になる。
(なにせ、この時点で、操船経験ゼロなのだから)
そして、自分の番が近づいて来た。
桟橋に試験艇が戻ってきてボクの前の受験者が降りると、
「はい、次はx番(ボクの受験番号)の方~、ライフジャケット着けてきてくださ~い」
と声が掛かる。自分でライフジャケットを着用し、試験員の待つ桟橋に行く。
※以下、す:シンノスケ、試:試験員
試「じゃx番さん(受験番号)、後ろに座ってください」
ボクは試験員の後部シートに乗り込む。
1級2級と違って、特殊には離岸とか解らんとかは無い。
試験場所までは、試験員が操船することになっている。
桟橋から離れると簡単に船艇の説明がある。
試「x番さんは個人申請での受験ですよね?どちらかで練習されました?」
す(いいえ初めてですとは言えず)「ええ」
試「練習の船はどこのでした?カワサキですか?」
す(ぎくっ)「え~・・・っと・・・だいぶ前なのでよく覚えてませんがヤマハかなぁ?」
試「そうですか~。この試験艇はヤマハじゃないので、じゃ簡単に試験艇の説明からしますね~」
試「シフトレバーは左側にあります」
試「スロットルレバーは引くタイプですね~」
試「これがキルスイッチケーブルです。腕に巻くのではなくてライフジャケットのリングにフックを引っかけるようになってます」
試「船側はこの真ん中、プラグを被せるタイプですね~」
試「スピードメーターはこの真ん中のデジタル表示のやつです。学科の前にも説明しましたが時速25~40キロの範囲で走行してくださいね」
試験員は、練習したときのバイクと違うメーカーだと操作に戸惑うからと、操船に必要な個所を説明してくれる。
やはり何らかの操船経験があることを前提に話しているようだ。「DVDみてイメージトレーニングしただけで、乗るのは今日が初めて」とはちょっと言いづらい雰囲気。
一通り説明が終わると、試験員と運転席を交代するため、試験員はシートから降りて横にどけて、
試「はい、じゃ、座ったまま前にズレてくださいね」
と言いながら、水上バイクが横転しないようバランスをとってくれる。
水上バイクといっても結構大きいので、水上でも大人2人が前後を入れ替わることが出来る。
いよいよ初めての水上バイク操船!
試「では、エンジンを始動してください、キルスイッチコードはこれです。ここは採点されますからね~」
とコードを渡される。説明があったとおりにライフジャケットの腹部付近についているリングに装着し、反対端を船体のキルスイッチに刺した。
その途端「ピープップッ」と電子音が大きく鳴った・・・「なんだ?この音?(汗)」。
液晶を見ると「MAINT」との表示が点滅している。なにせ初めての経験なので、ボクはこの状態が正しいのかどうか全くわからず、異常を示すエラー音と思ってしまった。
軽いパニックになったボクは、キルスイッチの接点を確認しながら、ケーブルを着けたり外したり・・・そのたびに電子音が鳴り響く。
試「どうしました?早く始動してください」
す「この音は・・・?」
試「問題ないですよ」
す(なんだ、異常ではないのか・・・と思いつつ)シフトレバーを後進に入れる。
す「はい、エンジンの始動をします、シフトレバーよし、キルスイッチコードよし」
す(そして大事な安全確認も忘れずに)
す「前方よし、右よし、左よし、後方よし、同乗者よし」
スターターキーを回してエンジン起動させて
す「エンジン始動しました」
試「はい、それではここからキルスイッチコード預かりますね~」
ライフジャケットに留めていたフックを外し、試験員に渡す。
試験員にしてみれば、何かあった場合にバイクを止める手段はキルスイッチしかないので、試験員が持つというわけだ。
エンジン始動すると、水上バイクは船と違って停止していることができない。
シフトレバーは後進に入っているので前に進むことはないが、微速ながらゆらゆらと動いている。
試「では、シフトレバーを戻してコース1のスタートの位置まで行ってください。あそこに見えるブイのとこですね~」
試「ここは採点ありませんからねー」
す「はい」
まず最初にシフトレバーを戻す(オフにする)わけだが、試験艇は一旦引いて押すタイプのようだった。これは予習でインプット済みだったので、戸惑うこともなくOK。
採点されないとはいえ、慣れる為に自発的に安全確認をする
す「前方よし、右よし、左よし、後方よし、同乗者よし」
ビビりながらもスロットルを引くと、バイクはブイーっと進みだす。
なんなくスタート地点に到着。
試「じゃ、コースを1周回って慣熟走行を行ってください、ここは採点しませんからね」
ここも自発的に安全確認を行う。
す「前方よし、右よし、左よし、後方よし、同乗者よし」
ちょっと深く息を吸って、いよいよ走航開始。
恐る恐るスロットルを引くと、「○!△※X?◇#・・・速っっっ!」
ボートとはまるで違うスゴイ加速!水上バイクとはよく言ったもので、まさにリッターバイクの加速感そのもの(・・・といいながらも、きっと大してスロットルはあけていなかったと思う)
きっと体ガチガチでハンドルにしがみ付いていたのだろうが、ふとスピードメーターに目をやると「15」の表示・・・「え?!」
マイル表示ではなかったハズ・・・ということは、これでもまだ最低速度には遠く及ばない?・・・とてもじゃないが操る自信なし。あっという間に旋回地点、安全確認したかどうかすら覚えていない。
ハンドル切って体重移動して旋回に入るものの、旋回中にビビって思いっきりスロットルを離してしまい、急減速。車でいうところの”どアンダー”ってやつで、ハンドルの向きとは無関係に全く曲がらない。旋回どころか、水上バイクは傾いたままあらぬ方向へ。。。。
大慌てになりながらも我に返り、ハンドル切ったまま再加速でなんとか旋回する。
そしてスタート地点に戻ったのだが、時間にして1分もないのにどっと疲れた。1周した程度じゃスピード感覚はやはり掴めない。
採点無しとはいえ、安全確認はまったくできなかったし、旋回はギクシャク、スピードは明らかに不足。
慣熟走行をもう数周くらいやらせて欲しいぐらい。これじゃ操船したことないのバレバレだな...
そんなこと考えていると息つく間もなく、
試「ではここからは採点が入りますからね~。コース1を行ってください」
と、試験本番のスタートを指示される・・・試験員からコメントなどは一切なし。
試験なので当然といえば当然なんだが・・・
す「前方よし、右よし、左よし、後方よし、同乗者よし」
ドキドキしながら、コース1スタート
かなり思い切ってスロットルを開けたつもりでも、スピードメーター見ると22km/hとか。
体感的には40km/hくらいなのだが、スピードを上げることに精一杯でよくわからない。
時間にしてほんの数秒と思うけど、あっというまに第一コーナー
「安全確認」?頭からすっかり飛んでいた。そのまま”安全確認”なしで単旋回。
折り返したあとは、往きで起こした自分の引き波でボンボン跳ねるバイクを抑えることで一杯一杯。
危険回避に向かう数秒間、勉強してきたポイントを思い出そうとするものの、すでに脳内パニック状態。
そのまま危険回避のブイめがけて突入し、
す「左よし、左後方よし」
かろうじて左側の安全確認、と同時に急旋回(・・・をしたつもり)。
なんとかブイには接触せずに通過できたとこで「ホッ・・・・」とした。
そして、もう一度単旋回、今度は安全確認を忘れずに
す「左よし、左後方よし」
折り返して、停止位置である危険回避用ブイに近づいたところで、
す「後方よし」
スロットルオフして、停船。
これでコース1は終了。時間にして1分程度。
安堵とともに、失敗とか後悔とかが走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
停船後、いやぁーな感じの間があいたあとに試験員が言い辛そうにコメント。
試「危険回避なんですが・・・・危険を察知して、いかに素早く回避できるか、素早い方向転換ができるかをみているわけで・・・」
試「前提としている状況が通常の旋回とは違うので、曲がり始めたらもっとスピードを上げて鋭角的に・・・」
試「もう一回やってみましょうか」
表情はわからないが、後ろから聞こえる試験員の声は、呆れているようにも聞こえる。
しかし、まったく感覚が掴めない。
・・・・というか、再テストを指示された時点で、不合格だと思った。
もし2回目が完璧だったとしても、1回目での2割減程度の採点になる・・・とは2級試験の時に聞いた話。
2回目で減点されるぐらいなら、1回目の大幅減点の方がまだマシとのことだった。
もうダメ元で、コース1スタート地点に戻った時には今できることだけ考えた。
・自分なりに操船できるスピードで走行。
・スピードが最低速度(25キロ)を下回っていても気にしない。
・「安全確認」だけは漏らさず全てやる。
・いつになるかわからないけど、次回の試験に向けて少しでも感覚を掴む
この心構えでコース1再試験。
スタートから最後まで、少なくとも”安全確認”だけは全て実施した。
そして危険回避して停船したあとに、またまた試験員のコメント。
試「うーん・・・やはり危険回避の時のスピード不足ですね。」
試「危険回避は”1番ブイめがけて走行し、ターンを始めて向きを変えたら一気にスロットルを開けて鋭角的に曲がる・・・”というのがポイントですよ」
対してボクのは”ブイの列と平行に走行、ターンし始めてからもゆる~い旋回・・・”ということらしい。
コース1の様子から、後ろに同乗している試験員は当然、ボクが不慣れなことを感じ取ってたはず。試験中にも関わらず説明してくれたのは、搭乗経験不足ということを察知してのお情けなのだろう。
勉強になったので感謝はしているのだが、暗に再試験を言い渡されたような気がして一気にテンションダウンしてしまった。
次はコース2。
コース1の失態で半ば諦めがついたので、肩の力が抜けてコース2は一発完走。
・・・とはいえ、スムーズな操船とはいい難く、8の字はまだマシなものの、スラロームはリズムがバラバラ。
低速でギクシャク・カクカクしながら周っていたと思う。安定するには「視線は遠く」「旋回方向の先へ先へ」が鉄則であることをすっかり忘れ、視線がめちゃくちゃ手前だったのは反省すべき点である。
その他、スタートと停止の時の安全確認だけはすべて実施。
(コース2は走行中の安全確認は不要)
コース2も時間は約1分程度。
最後に人命救助。
試「向こうの橋の上に、高速道路の緑色の看板がわかりますか?そこに向かってください」
す「前方よし、右よし、左よし、後方よし、同乗者よし」
ブイ列を離れて、指示された方向に向かって走行。
す「周囲よし」
とりあえず直進中も見張りも怠らない。
しばらくすると、ポンと肩を叩かれるので、
す「後方よし、停船します」
そして停船。
試「あそこに落水者がいます。それでは人命救助をはじめてください」
・・・こんな感じで人命救助も難なく終了。もちろん”安全確認”は全て実施した。
技術的にはどうってこともなく、2級船舶(ボート)での人命救助よりとっても簡単だった。
これも1分程度。
人命救助が終わると、試験員と交代するため前後を入れ替わり、試験員の操船で桟橋に戻る。
帰路、ボクはただ「ハァ・・終わった・・・」という感じ。
試験員は終始無言で会話はないものの、操船の様子を見ていると、周囲の見張りや旋回時の確認もしっかりやっている。
それもごく自然に余裕で・・・悔しいけど、それほどボクとは違っているということ。
桟橋につくと
試「じゃ、これで試験は全て終了です。ライフジャケットを脱いで、次の△番さんを呼んできていただけますか?」
桟橋の向こうで待機していた次の受験者に声をかけ、解散。
試験会場をあとにして、着替えのために更衣室に戻る。
時計に目をやると、全体でもたったの15分も経っていない。
操船していたのはせいぜい5分程度だろう。それでもボクにとってはとても長かったわけだが。。。。
気を落ち着けたところで、今後どうするか・・・を考える。
合格発表は一週間後だが、自己採点の限りでは学科は全問正解で合格しているはず。
実技のみの再試験は16,000円。その申請のために、また試験機関に出向いて手続きしなければならない。
それよりも、実技の練習をどうするか・・・調べてみると、特殊の実技講習のみはどこのスクールも概ね1~2万円程度。
つまり2度目の受験によって少なくとも26,000円の出費となる計算。
独学受験など狙わず、初めからスクール通えばよかったのか?
スクール行ったからといって100%合格するわけではないから、必ずしも独学受験が損だとは思わないけど、それでも結果的に高くついたとなればちょっと凹む。
ボートと違って水上バイクは、免許保持者が同乗したからといって操縦は許されていない(スクールや試験は別)。知り合いに借りて練習するなどは法的には許されないのがネックか。。。
覚悟を決めて、試験結果発表は、一週間後! ・・・・(「完結編」につづく)
■関連リンク
2級船舶免許取得記~その1(準備編)
2級船舶免許取得記~その2(実技講習)
2級船舶免許取得記~その3(受験編)
2級船舶免許取得記~その4(完結編)
独学で特殊船舶免許取得に挑む(準備編)
独学で特殊船舶免許取得に挑む(受験編その1)
独学で特殊船舶免許取得に挑む(受験編その2)
独学で特殊船舶免許取得に挑む(完結編)
独学で1級小型船舶免許取得~その1(準備)
独学で1級小型船舶免許取得~その2(受験)
独学で1級小型船舶免許取得~その3(おわりに)
コメント
[…] 問題はこの後だ。。。。。(「受験編その2」に続く!) […]